はやぶさ252号

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- な事業承継税制が必要である。
とくに、事業継続に資
する相続については、事業従事を条件として他の一般
3.消費税への対応
資産と切り離し、非上場株式を含めて事業用資産へ
消費税は社会保障の安定財源確保と財政健全化に欠
の課税を軽減あるいは免除する制度の創設が求めら
かせないが、軽減税率制度は事業者の事務負担が大きい
れる。
うえ、税制の簡素化、税務執行コスト及び税収確保などの
なお、本格的な事業承継税制が創設されるまでの
観点から問題が多い。
このため、法人会としてはかねてより
間は、
(2)取引相場のない株式の評価、(3)相続税、贈
単一税率が望ましく、低所得者対策は
「簡素な給付措置」
与税の納税猶予制度について見直すこと。
の見直しで対応するのが適当であると指摘してきた。
(2)取引相場のない株式の評価の見直し
また、
インボイス制度についても、事業者の事務負担が
取引相場のない株式の評価については、企業規模
増加したり、免税事業者が取引から排除されたりするなど
や業種によって多様であるが、企業価値を高めるほど
の理由によって休廃業に追い込まれることのないよう、
「区
株価が上昇し、税負担が増大する可能性があるなど、
分記載請求書等保存方式」
を当面維持する等、弾力的に
円滑な事業承継を阻害していることが指摘されてい
対応することを求めてきた。
る。取引相場のない株式は換金性に乏しいことを考慮
政府は軽減税率制度とインボイス制度について、国民や
し、評価のあり方を見直すことを求める。
事業者への影響のほか、低所得者対策の効果等を検証す
なお、見直されるまでの間は、平成14年度に創設
(平成16年度に改正)
された
「特定事業用資産につい
る必要があり、問題があれば制度の是非を含めてその見
直しを求める。
ての相続税の課税価格の計算の特例」
を参考に株式
の評価額を減額する措置を講じること。
(3)相続税、贈与税の納税猶予制度の充実
(1)
インボイス制度は導入されたが、国は、
引き続き、事業
者に混乱が生じないよう制度の周知を徹底するととも
平成30年度税制改正では、中小企業の代替わりを
に、事務負担が軽減するような環境整備が必要であ
促進するため、10年間の特例措置として同制度の拡
る。
また、課税事業者が免税事業者と取引を行う際、取
充が行われたが、特例承継計画の提出件数が伸び悩
引価格の引き下げや取引の停止などの不利益を与え
んでいる。
また、特例承継計画を提出しているものの、
ないよう、実効性の高い対策をとるべきである。
まだ事業承継を行っていない企業もある。政府は、制
(2)消費税の滞納防止は税率の引き上げやインボイス制
度の検証を行う必要がある。
なお、令和6年度税制改正では、特例承継計画の提
出期限が令和8年3月末日まで2年間延長されたが、制
度の導入に伴ってより重要な課題となっている。消費
税の制度、執行面においてさらなる対策を講じる必要
がある。
度の適用期限(令和9年12月末日)
は延長されなかっ
た。贈与税の納税猶予制度の後継者要件として、
「贈
与の直前において3年以上役員であること」が挙げら
Ⅲ
地方のあり方
れていることから、余裕を持った事業承継を行えるよ
う、特例措置の適用期限を3年程度延長すべきであ
国立社会保障・人口問題研究所がまとめた
「日本の地
る。
あわせて、事業承継がより円滑に実施できるよう以
域別将来推計人口
(令和5年推計)」
によると、2050年の
下の措置を求める。
総人口が2020年の半数未満となる市区町村が約20%に
①猶予制度ではなく免除制度に改める。
達するという。
また、民間有識者でつくる
「人口戦略会議」
②平成29年以前の制度適用者に対しても要件を緩和
は、地域や人口規模によって、出生率の向上という
「自然減
するなど配慮すべきである。
③制度の認知度が低いことから、国は円滑な事業承継
対策」、人口流出の是正といった
「社会減対策」
が重要であ
ることを指摘している。
が図られるよう、経営者に向けた支援措置の周知徹
日本が人口減少社会に突入する中では国と地方の役割
底に努める。
分担を見直し、財政や行政の一段の効率化を図る必要が
ある。
とくに東京一極集中を是正するには、地方の活性化
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