はやぶさ252号

- ページ: 4
- 令和7年度
税制改正に関する提言
全国の440ある法人会の令和6年度分の税制改正をとりまとめ、9月19日の全法連理事会におきまして、
「令和7年度税制改正に関する提言」が決議されました。この提言事項につきましては、その実現に向けて、
地元の国会議員並びに地方自治体に対し、提言活動を実施します。
公益財団法人全国法人会総連合
≪基本的な課題≫
Ⅰ
税・財政改革のあり方
踏み切った。
さらに7月には追加利上げも実施した。財務省
の試算によれば、今後も金利の上昇が続けば、一定の経済
成長を果たしても将来的には税収増より国債の利払い費
の方が増えることが想定されている。
「金利のある世界」
が
新型コロナの世界的な流行が収束し、我が国における
現実に到来する中で、今後の金利上昇に備えて財政健全
社会・経済活動もほぼ以前の状態に回復したと言える。
化が必要である。
ただ、
日本では100兆円規模とされる莫大なコロナ危機
我が国財政は金利の上昇に伴い、国債の利払い費の増
対応予算を計上したことで、国と地方を合わせた長期債務
加は免れない。
そして国債の信認が揺らいだ場合、長期金
残高は、本年3月末で1,285兆円を突破した。
こうした債務
利の予期せぬ急上昇など金融市場に多大な影響を与え、
残高は国内総生産(GDP)の2.2倍にも達する水準である。
安定的な経済成長を阻害することも懸念される。
そうした
コロナ禍前から我が国の財政状況は主要先進国の中で最
事態を回避するため、政府と日銀は健全な関係を構築して
も悪化していたが、今回のコロナ禍を経て、
さらに債務残高
金融市場の動向を慎重に見極めつつ、副作用を最小限に
が増加したことに十分留意する必要がある。
抑えるように細心の注意を払って政策運営に努めなけれ
財政健全化は国家的な課題であり、
日本経済の将来に
ばならない。
わたる持続可能性を高めるためにも本格的な歳出・歳入
の一体的改革を進めることが重要である。岸田文雄政権
(1)本年6月から始まった定額減税は、
その制度設計が複
が本年6月に閣議決定した
「経済財政運営と改革の基本
雑すぎたこともあり、企業や地方自治体に多大な事務
方針2024」(骨太の方針)によると、基礎的財政収支(プラ
負担を強いることになった。
また、物価高対策としての
イマリーバランス=PB)を2025年度に黒字化を目指す方
効果については限定的との批判がある。
マイナンバー
針が明記され、7月末に内閣府がまとめた財政収支の試算
を活用するなどして給付対象を限定し、
より高い政策
ではPBは25年度に黒字化を達成できるとの見通しを初め
効果を目指すべきであった。与党内には物価高などを
て示した。
背景に来年も継続するように求める声もあるが、政策
ただ、
この黒字達成は税収の大幅な増加を背景としてお
効果が不透明で企業の事務負担が重い減税は継続
り、大型の補正予算の編成やGX(グリーン・トランスフォー
すべきではない。
メーション)の対策費用を計上しないなど、特殊な前提を置
(2)
こども・子育て政策(加速化プラン)として、2028年度ま
いて試算したに過ぎない。黒字額の見通しも1兆円にも満
でに年間3.6兆円の予算規模とする方針だが、
この財
たない水準であり、財政見通しは決して楽観できる情勢に
源は社会保障の歳出改革や医療保険料に上乗せして
はない。歳出については聖域を設けずに分野別の具体的
徴収する
「支援金制度」
などで賄うとしている。岸田文
な削減の方策と工程表を明示する一方、歳入では税財政
雄政権は賃上げに加え、歳出改革で社会保険料負担
改革を通じた増収を目指すなど、実効性のある着実な取り
を抑制することで
「実質的な負担増はない」
と説明して
組みを求める。
いる。
だが、医療保険料への上乗せ負担は、現役世代
への実質的な隠れ増税と言える。社会保障改革が想
1.財政健全化に向けて
定通りに行われなければ、財源は国債頼みとなりかね
ない。政府は負担の議論から逃げず、消費税を含めた
日本銀行は本年3月、消費者物価の上昇などに対応して
安定的な財源確保策を検討し、持続可能な社会保障
マイナス金利政策を解除し、17年ぶりに金利の引き上げに
制度の確立と財政健全化の両立を目指すべきである。
- ▲TOP