はやぶさNo.246

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- 令和6年度
税制改正に関する提言
全国の440ある法人会の令和5年度の税制改正要望をとりまとめ、9月19日の全法連理事会におきまして、
「令和6年度税制改正に関する提言」が決議されました。この提言事項につきましては、その実現に向けて、
地元の国会議員並びに地方自治体に対し、提言活動を実施します。
公益財団法人全国法人会総連合
≪基本的な課題≫
Ⅰ.税・財政改革のあり方
新型コロナウイルスによるパンデミックは世界的に
収束段階となり、我が国も社会経済活動がほぼコロナ
禍以前の状態に戻った。これに伴い税財政政策の運営
も平時のそれに戻るわけで、本来の税財政改革に向け
た議論を可能にする環境が整ったといえる。
それにしてもコロナ禍が我が国財政に与えた打撃は
甚大であった。国債残高はコロナ対策財源として発行
された約100兆円が一気に上積みされ、1,000兆
円をゆうに超えてしまった。地方を含めると長期債務
残高は国内総生産(GDP)の2.2倍に上り、先進国の
中で突出して悪化している。
まずはこのコロナ対策財源の借金をどう返済するか
が重要な課題なのだが、その議論が全くないのは極め
て遺憾である。すでに米国や英国、ドイツなどの先進諸
国では早くから増税を含む借金返済計画を策定し一部
を実施に移している。我が国だけが議論さえ封印して
いたのでは国際社会の常識からみても異様であり無責
任である。
我が国財政の最大の問題は「中福祉・低負担」という
いびつな税財政構造にある。歴代政権のほとんどが身
の丈以上に「給付」を拡大させ、それに見合う「負担」を
回避してきた結果である。これを「中福祉・中負担」の均
衡構造に改革しなければ、先進国で最速のスピードで
進む少子高齢化や人口減少、そして財政の健全化に対
応できない。
岸田政権は「異次元の少子化対策」を打ち出しなが
ら、有力な財源となり得る消費税など新たな負担は求
めないとしている。少子化対策は目的税としての消費
税の対象分野である。コロナ対策財源も医療分野はそ
の対象になる。ただいたずらに消費税を否定していた
のでは、持続可能な社会保障制度の確立と財政健全化
を両立させる税財政改革の議論は成り立たないし、国
の未来も開けないであろう。
1.財政健全化に向けて
コロナ対策では主に補正予算で編成された必要以上
の多額な予備費や膨大な使い残しの発生など、財政規
律が大きく毀損された。コロナ禍がほぼ収束した今、財
政運営にとって重要なことはコロナ予算を検証しつつ
財政規律をどう回復させるかである。
岸田政権の主要政策を見ると、財政規律の回復どこ
ろか、それに逆行する動きとなっている。防衛力の抜本
強化では防衛費を2027年度までの5年間で総額4
3兆円とすることを決定したが、その財源が極めて曖
昧なのである。法人税などによる1兆円増税以外は、
「歳出改革」や「決算剰余金の活用」など大半が財源とし
て安定性を欠いている。これで国家の根幹である安全
保障が大丈夫なのか、強い危機感を感じる。
「異次元の少子化対策」では前述したように、今後3
年間で必要な追加予算額を3.5兆円とし、2030年
代には倍増を目指すという。これも財源には消費税な
どの新たな税負担は考えず、歳出改革などにより確保
するとしただけで具体的な中身は定まっていない。仮
に財源確保ができない場合、結局は少子化対策も防衛
費も国債頼みになるという懸念が拭えない。
国と地方のPB黒字化という財政健全化の目標年度
である2025年度が眼前に迫ってきた。本年7月に
内閣府が発表した「中長期の経済財政に関する試算」で
は、高い成長率を前提とした場合でも2025年度に
は1.3兆円の赤字が残り、黒字化は2026年度にな
るとする一方で、歳出改革を継続すれば2025年度
の達成も視野に入るとした。ただ、この試算には「異次
元の少子化対策」を反映していないため目標達成は極
めて難しいとみられる。
しかし、2025年度目標が達成できてもできなく
ても、来年度にはその後の中長期を視野に入れた財政
健全化の枠組みについて議論を開始せねばならない。
その際にはまず、金利が正常化に向かうことを前提に
する必要がある。我が国でもデフレ局面が終わり、日銀
のゼロ金利政策が変化しつつあるからである。
つまり、異次元緩和下では黙っていても低下してき
た健全化目標の一つである債務残高対GDP比の流れ
が持続できなくなる可能性が高い。このため、債務残高
対GDP比を安定的に引き下げていくには、単なるP
B黒字化ではなく一定の黒字幅を確保せねばならな
い。また、PBの歳出には利払い費が含まれないが、先
進各国のようにこれを含む財政収支の黒字化を新たな
健全化目標として採用することを提案したい。
負担をあやふやにし歳出だけを先行実施するような
財政運営を是正するには、米国が採用している「ペイア
ズユーゴー原則」も有効であろう。これは新しい政策に
は歳出削減による財源捻出が必要で、それができなけ
れば増税で財源を確保せねばならないという仕組みで
ある。忍び寄る財政危機を回避するには、こうした厳し
い財政規律を確立する以外に道はないであろう。
(1)財政健全化は国家課題であり、本格的な歳出・歳入
の一体改革を進めることが重要である。歳入では
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