はやぶさNo.246

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- 定財源の確保や行政改革を企画・立案し実行するなど、
自立・自助を基本理念とすることが肝要である。
残念ながら、現状ではこの理念とはかけ離れたよう
なケースが少なくない。例えばコロナ臨時交付金が使
用されず基金に回っている可能性があるとの指摘がな
されている。実際、一部自治体では財政調整基金があっ
という間にコロナ前の水準を回復したという。そもそ
もPBが黒字である地方が、コロナ対策で財政を著し
く悪化させた国に依存する姿は大きな矛盾と言わざる
を得ない。
「ふるさと納税制度」にも問題が多い。昨年度の納税
額が過去最高の1兆円に迫る水準に達しており、返礼
品競争規制策の効果が低いことを証明している。税収
の流出額が大きく同制度を批判してきた自治体が、我
慢も限界にきたとして返礼品競争に参入する例も出て
きた。住民税は居住自治体の会費であり、他の自治体に
寄付の形で納税することは地方税の原則にそぐわな
い。納税先を納税者の出身自治体に限定するなど、さら
なる見直しが必要である。
(1)地方創生では、さらなる税制上の施策による本社
機能移転の促進、地元の特性に根差した技術の活
用、地元大学との連携などによる技術集積づくり
や人材の育成等、実効性のある改革を大胆に行う
必要がある。また、中小企業の事業承継の問題は
地方創生戦略との関係からも重要と認識すべき
である。
(2)広域行政による効率化や危機対応について早急か
つ具体的な検討を行うべきである。基礎自治体
(人口30万人程度)の拡充を図るため、さらなる
市町村合併を推進し、合併メリットを追求する必
要がある。
(3)国に比べて身近で小規模な事業が多い地方の行財
政改革には、
「事業仕分け」のような民間のチェッ
ク機能を活かした手法が有効であり、各自治体に
おいても広く導入すべきである。
(4)地方公務員給与は近年、国家公務員給与と比べた
ラスパイレス指数(全国平均ベース)が改善せず
に高止まりしており、適正な水準に是正する必要
がある。そのためには国家公務員に準拠するので
はなく、地域の民間企業の実態に準拠した給与体
系に見直すことが重要である。
(5)地方議会は大胆にスリム化するとともに、より納
税者の視点に立って行政に対するチェック機能
を果たすべきである。また、高すぎる議員報酬の
一層の削減と政務活動費の適正化を求める。行政
委員会委員の報酬についても日当制を広く導入
するなど見直すべきである。
Ⅳ.震災復興等
政府は東日本大震災からの復興について、令和3年
度から7年度までの5年間を「第2期復興・創生期間」
と位置付け、復興の円滑かつ着実な遂行に期すること
としている。そのためには、これまでの効果を十分に検
証し、予算の執行を効率化するとともに、原発事故への
対応を含めて引き続き適切な支援を行う必要がある。
とりわけ被災地における企業の定着、雇用確保などに
対し実効性ある措置を講じるよう求める。
また近年、熊本をはじめとした強い地震や台風など
による大規模な自然災害が相次いで発生している。東
日本大震災の対応などを踏まえ、被災者の立場に立っ
た適切な支援と実効性のある措置を講じ、被災地の確
実な復旧・復興等に向けて取り組まなければならない。
Ⅴ.その他
1.納税環境の整備
行財政改革の推進と納税者の利便性向上や事務負担
の軽減を図るため、国税と課税の基準を同じくする法
人の道府県民税、市町村民税、法人事業税の申告納税手
続きについて、地方消費税の執行と同様に、一層の合理
化を図るべきである。
2.環境問題への対応
政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を実
質的にゼロにする「カーボンニュートラルの実現」を目
指し、その中間に位置する2030年に2013年度
比で「46%削減する」との目標を国際公約として打ち
出している。
令和5年5月にはGX推進法が成立し、
「GX経済移
行債」を発行して脱炭素化に向けた民間投資を進める
とともに、その償還財源として二酸化炭素の排出量に
応じて企業に負担を求める「カーボンプライシング」が
導入された。
一方で、エネルギー価格は高止まりしており、家庭、
企業における負担感は高まっている。原発の再稼働や
稼働期間の延長等を含めたエネルギー問題のあり方に
ついて、積極的に検討を行う必要がある。
3.租税教育の充実
税は国や地方が国民に供与する公共サービスの対価
であり、国民全体で等しく負担する義務がある。また、
税の適正な納付はもちろんのこと、その使途について
も厳しく監視することが極めて重要である。しかしな
がら、税の意義や税が果たす役割を必ずしも国民が十
分に理解しているとは言えない。学校教育はもとより、
社会全体で租税教育に取り組み、納税意識の向上を
図っていく必要がある。
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